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ジョルジオ・デ・キリコとの出会い~すぐわかる画家別幻想美術の見かた
2007-12-02 Sun 21:43
私がアートに興味を持つきっかけになった本について記します。以前から「アール・ヌーヴォー」や「アール・デコ」など」「工芸や装飾といったものを芸術的領域まで高めよう」という「運動」には興味を持っていましたが、私自身が認められる「真の芸術家」には出会っていませんでした。

学生時代、美術の教科書の中で出会った芸術家・芸術作品は、「世間が認めた芸術」であって私が「これぞ芸術」と唸ることのできるものではありませんでした。同じことをあえて違う表現でなぞるならば「この作品は当時の芸術界に衝撃を与えた」「ものすごい金額で売れた」と言われても私にはピンと来なかったということです。

そんな折、一冊の本に出会いました。すぐわかる画家別幻想美術の見かた という本です。



特別の様式でもなく流派でもない「幻想美術」というものにスポットを当てた本で、1450年代頃から近代までの作家を紹介しています。一人につき見開き2ページにわたって、簡潔な作家の紹介文、代表作一点とその紹介文で構成されています。
その構成上、代表作一点のチョイスや書き手の文章によって作家の印象は大きく左右されるわけですが、私の見る限り、作品の選び方も概ね妥当で説明文も大きな偏りのない簡潔でわかりやすい文章に思えました。

順不同にパラパラと本をめくっては、気になった作品に目を留め説明文に目を通しました。

マルク・シャガール・・・聞いたことある有名な人だけどあんまりピンと来ないなぁ。」
グスタフ・クリムト・・・この人の絵は見たことあるな。なかなか官能的で面白い。」
サルバドール・ダリ・・・前に見た作品はもう少し面白かった気がしたけど。やっぱり作品の選び方で印象も変わるか。」


と作家ごとに一喜一憂しながら読んでいました。掲載されている作品の大きさ・見易さなど本の構成への印象は良くなる一方でした。

エドワルド・ムンク・・・ムンクの代表作はやっぱり『叫び』か。さすがに感じるものがあるなぁ。こういうのは芸術って言ってもいいのかもなぁ。作品説明も的確でわかり易い」
大分内容へ引き込まれていたところに一枚の絵が目に飛び込んできました。

「なんだ、、、これ?」

あるいは口に出してそう言ったかもしれません。
長い間、もしくは生まれてこの方感じたことのない感情が激しく刺激されました。説明し難いその感覚。

不安感・寂しさ・懐かしさ?さまざまな感覚が混ざり合った奇妙な感覚に襲われ、それでいて全然嫌な感じはしませんでした。じっと見入ってしまいました。
からし色に近い地面の広がる広場。画面の奥、小さくなるまで続くシンプルな建造物の側面。画面手前であらぬ方向を向いている石像。遠くにいる、どのような格好をしているのかもわからないほど小さくしか見えない二人の人物とその影。そして画面右に少しだけ見えている建物が斜めに大きな影を落としています。
作家の名は「ジョルジオ・デ・キリコ」と云い、作品名は「ある日の謎」というものでした。

私は「幻想美術の見かた」の説明文から、キリコが「シュルレアリスムの先駆者」であること、「形而上絵画」の提唱者であること、長年に渡って作家活動をしたにもかかわらず「一時期の作品しか評価されていない」こと、その奇行から「シュルレアリスムの裏切り者」とさえ言われていることを学びました。
ジョルジオ・デ・キリコ本人への興味もさることながら、言葉だけは聞いた事のある「シュルレアリスム」。聞いたこともない「形而上絵画」という言葉も今後さらに知る必要を感じました。

「“真の芸術家”は存在した」と思いました。そして彼のほかにもおそらく真の芸術家は存在していて、私が気づいていないだけなんだろうと思うと、大げさでは無く生きる楽しみが増えた気がしました。

友人のorangeobject君 は非常に物知りで芸術にも詳しいので、電話で話した際にこのすばらしい出会いについて伝えました。
彼は「それほど詳しいわけではないけど」と前置きをした上で、「キリコについてはある程度知っていること」「漫画家・黒田硫黄氏 の絵を『キリコの絵を思わせる』と評する人がいる」ということを語ってくれました。自分に衝撃を与えた芸術家と元々好きだった漫画家という二つの点が線でつながったのはうれしい誤算でした。

「幻想美術の見かた」の「ある日の謎」作品紹介文は秀逸です。
「見る者を不安で落ち着かない気分にさせる」という一文は私のリアクションが的外れではなかったことを証明し、「『ある日の謎』は永遠に謎のままなのである。」と迷宮に迷い込んだ私を置き去りにしたまま文章を結んでいます。

かくして一冊の本と一人の作家との出会いは、私に多くの楽しみと「謎」を残しました。
(※この記事は数年前に書いたものの手直ししたものです)


De Chirico: The Metaphysical Period, 1888-1919De Chirico: The Metaphysical Period, 1888-1919
(1998/05)
Paolo Baldacci、Giorgio De Chirico 他

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デ・キリコの洋書。この本の表紙に描かれているのが「ある日の謎」


すぐわかる画家別幻想美術の見かたすぐわかる画家別幻想美術の見かた
(2004/11)
千足 伸行

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私が美術鑑賞に目覚めるきっかけになった本。沢山のアーティストを簡潔な文章で紹介しているので入門書としては最適。私はこの本で、デ・キリコ、ヒエロニムス・ボス、マグリット、エルンストらを知ることが出来ました。



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| 虹色新天地 |
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